詩集・短歌集

   諦め
いくら考えてみても
過去は変わらない
この歳になっては
未来もない
夢も希望もないが
諦めの境地のせいか
意外と心は穏やか
これが老境か
夢も希望もなく
生き恥を晒して
今日もなすすべもなく時は過ぎてゆく
   神の生誕
無限の時が流れたあとに
神は生誕した
それは夜の明ける
明るい朝の訪れでもあった
   孤独の日
孤独な日に
神様がともにおられる
神様がともにおられる
と、心につぶやいてみる
   音楽
台風が去った日に
YouTubeでビル・エヴァンスを聴いている
懐かしい
時が経ち
私の人生も穏やかになった
音楽が連れてくる過去の想い出
若い日の夢
少し切なくノスタルジックな午後
音楽を友に
本をめくる
そんな孤独のひとときさえ
何故か甘美だ
   
   数学
年老いてしまった日に
「数学ガール」を読んでいる
自分にも高校時代があった
昔の話だ
数学が好きだったあの頃
まだ夢があったあの頃
あの頃にはもう戻れない
ただ諦める
しかし、落ちるだけ落ちればいいのだ
この道を降りてゆこう
また希望の上り坂が見えるまで
もう一花咲かせよう
まだ少しは時間がある
   欲
年を取ると
欲がめっきりなくなってくる
夢も希望もない
それでも衰えない欲がふたつある
食欲と知識欲
もっとおいしいものが食べたい
もっと多くのことを知りたい
でも、これは子供の頃からあった欲だな
私も変わらないなぁ
食欲の秋
読書の秋
いい季節になった
   永遠
人生は短いというけれど
自分の子供時代は
本当に遠い過去のようだ
あれから無限の時間が過ぎたように思える
人は忘れてしまっているけれど
人は皆
子供の時分は
あの永遠の園で
永遠を味わっている
大人になって
時が速く過ぎようとも
子供の頃を思い浮かべようとすれば
その遥かに遠い過去に
どうしても手が届かず
永遠の時が経ったように思われて仕方がないのだ
銀杏の葉色づき始める秋の日は天高くして風は冷たし
霜月に泣きたくなって秋の風冷たいからとて世をば恨むな
ただひとり蜜柑の味の酸っぱさよ皆で食べたあの冬の日よ
   心
心は不思議だ
説明すれば説明するほど
説明し足りない気がしてくる
久々の持て余しぎみのわが心散歩に出でて全て忘れん
なんとでももの言わば言え人は人我は我とぞわが道を行く
これからも我は語らじ我がことをも人のことをも虚しき故に
   春 
桜の盛りも過ぎ
新緑が爽やかに瑞々しく咲きいづる
今日も散歩に行ってきた
家に帰って
懐かしい曲をYouTubeで聴く
昔のことが思われてくる
母や父がまだ生きていたあの頃
あの頃は良かったな
ああ、ただ懐かしく
やがて少し悲しくなってきた
   子供
銀杏の葉が黄金色に染まるころ
私は公園を訪れベンチに座る
遠くの方で小さな子供達が遊ぶ
ああ、その歩き方、走り方
釣られて私も嬉しくなる
私にもあんな時分があったのだ
ふと不思議な気持ちになり
養ってくれた父母のことが思われて
やがて少し悲しくなった
我思う故に我あり然れども我思わざれば我なし
遠くより遊ぶ子供を眺めれば遠い昔の父母を覚える
静かなる冬の夜長に見ゆる月部屋に差しいりわが身を照らす
数学の本が読みたい冬の午後懐かしきは高校の頃
相対論よく分からぬが読んでみるわが憧れのアインシュタイン
荒井公康
http://www5f.biglobe.ne.jp/~kimmusic/

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